
ビジネスのオンラインシフトやDXの進展、Webサービスの充実などにより、IT業界では慢性的な人手不足が続いています。経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によれば、2030年に不足するIT人材は最大で79万人程度に上るとされており、経営に直結する喫緊の課題としてIT人材の採用を急ぐ企業は少なくありません。中でも、最新の技術と知見を駆使してWebサービスを生み出せるWebエンジニアは、需要が高く、将来性のある職種といわれています。この記事では、Webエンジニアの仕事内容や、求められるスキルについて解説します。
Webサービスに必要なシステムを作るWebエンジニア
Webエンジニアは、WebサイトやWebアプリケーションなどのWebサービスを展開するために必要なシステムを作るエンジニアです。Webエンジニアが具体的に担当する業務の範囲は企業によって異なりますが、インターネットに関連する開発業務のうち、Web系の仕事を担うエンジニアを総称してWebエンジニアと呼びます。代表的なWebサービスは、コミュニケーションツールとして不可欠なWebメールのほか、動画提供サービス、ソーシャルネットワークサービス、キャッシュレス決済サービス、ECサイトなどです。Webエンジニアは、こうしたWeb上で動作するITシステムやアプリケーションの設計から運用、保守までを幅広くカバーします。
Webエンジニアの仕事内容
Webエンジニアの仕事内容は、Webデザインを除くWeb開発業務全般で、大きく「要件定義」「開発・コーディング」「保守・運用」の3つの工程に分かれます。ここでは、それぞれの工程について詳しくご紹介します。
要件定義
Webエンジニアの仕事は、Webサイトの制作プロジェクトの準備段階で、Webサイトの目的を明らかにする要件定義から始まります。依頼主がWebサイトに求めているものや、Webサイトを通して実現したいことについて、顕在的・潜在的なニーズを引き出し、具体的な機能や制作範囲を決定して設計書に落とし込みます。このとき、単に依頼主の要望や指示を反映するだけではなく、専門家の立場からより良い仕様を勧めたり、目的から逆算して搭載すべき機能を提案したりすることが大切です。また、依頼主が強く要望する機能であっても、予算との兼ね合いですべてを実現するのが難しければ、その旨を伝えて取捨選択してもらわなくてはなりません。
なお、Webサイトの制作に着手してから要望が追加されると、当初の予定と設計が大きく変わり、それまでの作業がすべて無駄になることもあります。そのため、要件定義の段階で、自社と依頼主の両者間での合意形成をしておくことが重要です。よって、Webエンジニアには、要件定義をリードできる広範かつ専門的なWebの知識と、必要に応じて説明や交渉を行えるコミュニケーション能力が欠かせません。
開発・コーディング
要件定義によって全体の設計書が完成した後に行うことは、要件定義書に沿ってプログラムを書く、開発・コーディングです。Web開発で使う主なプログラミング言語は、スクリプト言語であるPHPやRuby、Python、JavaScriptのほか、Webページの構成に必要な言語のHTML、CSSなどがあります。なお、PHPやJavaScriptはWebに特化したプログラミング言語ですが、汎用性を求めるならRubyやPythonも覚えておくと対応できる案件の幅が広くなります。
保守・運用
Webサイトを作るだけでなく、作ったWebサイトの保守・運用もWebエンジニアの仕事の一つです。Webサイトが完成した後は、想定している仕様どおりのページ遷移や使い勝手の良さといった点をチェックするためのテストを実施します。その上でWebサイトを公開し、保守・運用を行います。なお、Webサイトの保守とは、不具合が生じたときの修正対応やメンテナンス、運用はシステムが安定的に働くよう監視し、より快適に動作するよう必要に応じて改善を図ることです。場合によっては、Webサイトの使い勝手や見た目をより良くするため、Webエンジニアから依頼主に追加の仕様を提案することもあります。
Webエンジニアの職種
Webエンジニアの職種は、Webサイトのどの部分を担当するかによって、大きく「フロントエンドエンジニア」と「バックエンドエンジニア」の2つに分けられます。それぞれの特徴について詳しくご紹介します。
フロントエンドエンジニア
フロントエンドエンジニアは、Webサイトやアプリケーションにおいて、ユーザーから直接見えるインタフェース部分の設計や実装を担当するWebエンジニアです。具体的には、HTMLやCSS、JavaScriptといった開発言語を使用してWebページの構造を設計したり、クリックされたボタンをへこませるなどのWebサイトに必要な動きを持たせたりします。また、Webデザイナーが制作した画面レイアウトや配色に沿ってWebサイトの色やサイズ、レイアウトなどを決定し、Webサービスや製品とユーザーをつなげる接点であるUI(ユーザーインタフェース)、Webサービスや製品を利用することで得られる体験を指すUX(ユーザーエクスペリエンス)を設計します。
さらに、ユーザーが使用しているそれぞれのデバイス(PC、タブレット端末、スマートフォンなど)で最適化された画面を見られるようにする、レスポンシブWebデザインに対応することもフロントエンドエンジニアの重要な役割です。なお、UI構築の際は、JavaScriptライブラリのReactやJavaScriptのフレームワークであるVue.jsなどを用います。大規模で複雑な案件には標準搭載されている機能が豊富なReact、小規模でシンプルな開発には拡張機能が豊富でカスタム性に優れたVue.jsを使うことが一般的です。
バックエンドエンジニア
バックエンドエンジニアは、フロントエンドエンジニアとは反対に、ユーザーが直接見たり触れたりしない部分の開発を担当するWebエンジニアです。具体的には、サーバーやMySQL、Oracleといったデータベースの構築・処理のほか、Java、Scalaなどを用いたプログラム開発、基幹システムの設計・開発を担当します。どれもWebサイトが機能するための基本となる部分であり、プロジェクトの根幹を支えるポジションと言っても過言ではありません。なお、バックエンドエンジニアは、サーバーサイドエンジニアと呼ばれることもあります。
Webエンジニアに求められるスキル
Webエンジニアには、多様なスキルが求められます。ここでは、プログラミング言語やデータベースに関するスキルなど、Webエンジニアとして活躍するために重要なスキルについてご紹介します。
プログラミング言語に関するスキル
プログラミング言語に関するスキルは、Webエンジニアとして働く上で欠かせないスキルです。Webエンジニアは、実際に手を動かしてプログラムを書くところまで、一人で担当することが少なくありません。そのため、シーンに応じたプログラミングができる能力が必要になります。プログラミング言語にはさまざまな種類がありますが、フロントエンドエンジニアを担当するなら、HTMLやCSS、JavaScriptのスキルがお勧めです。バックエンドエンジニアなら、使用される場面が多いPHPやJava、ニーズが高いRubyやPythonを習得しておくことをお勧めします。
未経験からWebエンジニアを目指す場合は、目指す領域で要求されるプログラミング言語において最低限のスキルを身につけておくことが必要になります。ほかに、幅広い業務に携わるために、一つでも多くのプログラミング言語を習得することも大切です。また、プログラミング言語にはトレンドがあるため、柔軟に対応できるよう、広く学んでおくことをお勧めします。
データベースに関するスキル
データベースに関するスキルも、Webエンジニアに求められるスキルの一つです。データベースなどに関するインフラ領域を理解していると、Web開発をスムーズに行うことが可能です。データベースに保存されたユーザーの入力情報をフロント側に表示したり、アプリケーションの管理方法によってデータベースを変えたりするなど、Webエンジニアの仕事とデータベースは密接に関わっています。また、近年はクラウドサービスのAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azure、GCP(Google Cloud Platform)のスキルがあるWebエンジニアは、クラウドへの移行を進める企業に重宝される傾向があります。
サイバーセキュリティに関するスキル
Webエンジニアにはサイバーセキュリティに関するスキルも必要です。Webサイトは、不正アクセスやサイバー攻撃といったネット上のさまざまなリスクにさらされています。そのため、サイバーセキュリティに関しては、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニアのいずれも、不正アクセスやサイバー攻撃にはどのような手口があるのか、何がどのように狙われているのかを理解しておくことが大切です。具体的に求められるスキルには、外部からの攻撃に備えた防御プログラムのセキュアコーディングに関する知識や、不正アクセスなどに対する脆弱性とマルウェアへの感染に対する適切な対策を講じられること、脆弱性を検証するペネトレーションテストが実行できることなどが挙げられます。
コミュニケーションスキル
Webエンジニアが円滑に仕事をするためには、コミュニケーションスキルは重要な要素の一つです。Webエンジニアは、一人で黙々とPCに向かう仕事ではありません。個人で集中して作業をすることもありますが、基本的にはWebデザイナーやプログラマー、インフラエンジニア、Webディレクターなどとプロジェクトを組んで仕事を進めます。そのため、担当領域が異なる仲間と円滑にプロジェクトを進めるには、対話による連携が欠かせません。
また、Webエンジニアは、要件定義から関わる立場上、顧客にヒアリングする機会も多くあります。ヒアリングの場面では、積極的な対話で相手の話を引き出して潜在的な課題やニーズを探り、解決策を提案できる力が高いと顧客の信頼を得やすくなります。自分の意図を正確に言葉にして伝え、相手の思いを正しくくみ取るコミュニケーションスキルは、Webエンジニアとして活躍する上で欠かすことができないスキルの一つです。
Webエンジニアのやりがい
Webエンジニアには、多くのユーザーが利用するWebサイトやWebアプリケーションを作る職種ならではのやりがいがあります。ここでは、Webエンジニアとして感じることができる主なやりがいをご紹介します。
自分のアイデアを形にすることができる
Webエンジニアは、自分のアイデアを多くのユーザーが利用するWebサイトやWebアプリケーションといった形で表現できる職種です。「こんな機能があったらさらに便利になる」「今あるサービスがこうだったら、もっと使いやすくなる」といった自分のアイデアを形にできた瞬間の喜びは計り知れません。また、自分で生み出したサービスを多くの方に活用してもらい、生活の利便性や豊かさの向上に貢献できる点もやりがいの一つではないでしょうか。
ユーザーの反応が見えやすい
Webエンジニアが作るWebサービスは、ユーザーの反応が見えやすいこともやりがいとして挙げられます。実際にユーザーの評価に触れられることは、作り手にとって励みになります。また、厳しい意見があったとしても、Webサービスの改善に生かすためのアドバイスとして受け止めることができれば、自身のモチベーションを維持して技術力の向上につなげることができるのもポイントです。
自己成長を感じやすい
成長するにつれて対応できることが増えていくため、自己成長を感じやすいこともWebエンジニアのやりがいの一つです。Webエンジニアとして働き、スキルアップをしていくと、基本的な業務範囲を超えてWebサイトのレイアウトやデザインなどを任されることがあります。また、マネジメント志向がある方なら、チームやプロジェクトのマネジメントを手掛け、管理職へとキャリアを進めることも可能です。このように、Webエンジニアはプログラミングスキルにとどまらない多彩なスキルが身につくため、自己成長を感じやすく、幅広いキャリアプランを描くことができます。
Webエンジニアに向いている人
前述のとおり、Webエンジニアは、プログラミング言語やデータベースに関するスキルや知識のほか、プロジェクトメンバーとの連携が求められます。そのため、自己学習が得意な方、コミュニケーションやチームワークが好きな方に向いている職種です。ほかに、コツコツ修正を繰り返す作業も少なくないため、地道に物事を継続できる方にも向いているといえます。
自己学習が得意な人
日進月歩で技術が進化するWeb業界では、自己学習が大切です。すき間時間を使って、新しいスキルや知見を習得することを楽しめる方なら、Webエンジニアとして成長し続けることができます。また、社会人になってからWebエンジニアを目指す場合、時間や経済的な理由からWebエンジニアのスキルを学ぶ学校に通うのが難しい方もいるかもしれません。そうした場合には、自分で学習する必要があるため、Webエンジニアに関連する書籍を探したり、外部セミナーに参加したりして、学べる方法を自ら探すことができる意欲も重要です。
コミュニケーションやチームワークが好きな人
周囲との連携の中で仕事を進めるWebエンジニアは、他者との関わりが大切です。一人で黙々と仕事をしたかったり、チームプレイがあまり好きではなかったりするタイプの方は、Webエンジニアとしては活躍しにくいと考えられます。そのため、Webエンジニアは、プロジェクトチームの仲間や依頼主との接点をおろそかにせず、コミュニケーションを楽しめる方に向いているといえます。
地道に物事を継続できる人
自由な働き方ができるなど、Webエンジニアの仕事は一見すると華やかなイメージがありますが、実際には地道で目立たない作業が大半を占めます。Webサービスを作り上げても、エラーやトラブルが何度も起こり、コツコツと修正を繰り返すことも珍しくありません。そのため、真面目に仕事に取り組み、やるべきことと根気よく向き合える方であれば、Webエンジニアに向いているといえます。
Webエンジニアとして活躍するために役立つ資格
知見を増やし、より市場価値の高いWebエンジニアになるためには、資格の取得がお勧めです。ここでは、Webエンジニアとして活躍するために役立つ代表的な資格をご紹介します。
ITパスポート試験
ITパスポート試験は、新しい技術や開発手法の基礎知識をはじめ、経営に関する知識、セキュリティとネットワークに関する知識など、広範な知識が問われる国家試験です。これから社会人になる学生から、すでにITを利用している社会人まで、基礎的なITの知識を習得したいすべての方に適しています。
参考:独立行政法人情報処理推進機構「ITパスポート試験」
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITを活用したサービスや製品、システムおよびソフトウェアを作る人材を対象とした国家試験です。国家試験としては最大規模の受験者数で、ITエンジニアの登竜門といわれることもあります。統計学やアルゴリズム、プログラミング、ネットワーク、セキュリティなど、試験範囲が幅広い分、この資格を取得するとIT業界で働くために必要な知識と技能を有していることを客観的に証明できます。
参考:独立行政法人情報処理推進機構「基本情報技術者試験」
HTML5プロフェッショナル認定試験
HTML5プロフェッショナル認定試験は、HTML5やCSS3、JavaScriptなど、最新のマークアップに関する知識と技術を評価する認定制度です。基礎的なWebコンテンツ制作の実力を見る「レベル1」と、動的なWebコンテンツを設計・開発する能力を見る「レベル2」に分かれ、Webエンジニアとしての汎用的な知識が問われます。
参考:特定非営利活動法人エルピーアイジャパン「HTML5プロフェッショナル認定試験」
PHP技術者認定試験
PHP技術者認定試験はPHPの知識と技術を問う試験です。試験の内容は、学生や社会人1~2年目の方向けの「初級」、実用的なプログラミング技術を持つ方向けの「上級」、研究論文またはコードを提出して審査を受ける「認定ウィザード」の3種類です。実務でプログラミングを行っている方を対象とした上級になると非常に難度が高く、合格率が低いことで知られています。そのため、上級のPHP技術者認定試験に合格すれば、非常に専門性が高い人材として高い評価を受けることができます。
参考:一般社団法人BOSS-CON JAPAN PHP技術者認定機構「PHP技術者認定試験」
Webエンジニアとしてキャリアアップを目指すならSky株式会社
Sky株式会社では、Webエンジニアのキャリア採用を行っています。大手企業を中心とした多様な業界の案件があり、業務系システムやWebアプリケーションの上流から開発工程までを担っていただきます。また、プロジェクトマネジメントはもちろん、ReactやVue.jsを利用した開発などの経験を積むことも可能です。Webエンジニアとしての第一歩を踏み出し、キャリアアップしたいという方は、Sky株式会社の採用募集へのご応募をご検討ください。
応募資格やそのほかの条件、応募方法などはWebサイトにてご紹介しています。Webエンジニアとしての転職をお考えの方は、ぜひご覧ください。