
統計データの分析は、客観的な根拠に基づいた意思決定に役立つとして、研究やビジネスなど分野を問わず不可欠なものとなりました。それと同時に、コンピューター性能の向上に伴ってAIの活用が急速に拡大しています。AIと統計学は、それぞれに異なる目的のためのものですが、データサイエンスという広範な分野で連携し、互いに補完し合う関係性にあります。この記事では、AIと統計学の関係性、AI・機械学習に関連する統計学的手法、統計データの分析にAIを活用する方法などについてまとめました。

統計データの分析は、客観的な根拠に基づいた意思決定に役立つとして、研究やビジネスなど分野を問わず不可欠なものとなりました。それと同時に、コンピューター性能の向上に伴ってAIの活用が急速に拡大しています。AIと統計学は、それぞれに異なる目的のためのものですが、データサイエンスという広範な分野で連携し、互いに補完し合う関係性にあります。この記事では、AIと統計学の関係性、AI・機械学習に関連する統計学的手法、統計データの分析にAIを活用する方法などについてまとめました。
AIの開発と統計学とは、切っても切り離せない関係にあります。なぜなら、AIの開発で用いられるさまざまな手法は、数学や統計学的な知見を土台としているものが多いからです。
例えば、AI開発における重要な基礎技術の一つである「一般化線形モデル」は、統計手法である回帰分析の適用範囲を広げた枠組みです。そのため、尤度(ゆうど)やAIC(赤池情報量規準)といった考え方が求められます。また、教師なし学習手法の一つであり、クラスタリングや生成モデルの基礎としてAI開発に利用される「混合ガウスモデル」では、統計学で重要視される正規分布の考え方が欠かせません。
AI・機械学習と統計学との間には、データを扱う目的において明確な違いがあります。
AI・機械学習では、蓄積された膨大なデータから学習を行い、別の新たなデータに対して予測を行います。例えばECサイトでのレコメンド機能などで用いられ、得られた予測結果には精度の高さが求められます。
一方の統計学では、少ないサンプルからも規則性やデータ同士の関連性を割り出します。例えば、天気予報における降水確率の導出などに用いられ、予測されたデータが妥当であるかどうかを、根拠を持って説明するのに役立ちます。
現在は、学習済みのモデルやデータセットなどがインターネット上に豊富に存在するため、簡単なAI開発であれば、深い統計学の知識がなくても進められます。しかし、AI開発に欠かせない機械学習の土台となっているのは数学と統計学です。より高度なAI開発を自由に行うには、その開発プロセスで統計に関するさまざまな知識が求められます。
例えば、「決定係数」や「標準偏差」といった基礎的な用語は、機械学習でも統計学でも共通して用いられます。また、AI開発では最良なモデルの選定や教師データの解析、テストデータの作成などを行う必要がありますが、いずれのプロセスでも、統計学の知識がなければ堅牢で信頼性の高いAIは開発できません。
このように、統計学はAI・機械学習全体の基盤となる重要な役割を持つ学問です。ここでは、特にAI・機械学習との関連性が強い統計学的手法を3つご紹介します。
正規分布は「ガウス分布」とも呼ばれる、機械学習においてきわめて重要な概念です。多くの自然現象や確率変数がこの分布に従うことが知られており、さまざまなアルゴリズムやモデルの基盤となっています。
機械学習の多くの手法では、扱うデータが平均0、標準偏差1の「標準正規分布」に従うことを前提としています。これはアルゴリズムが最適に機能し、分析結果の信頼性を高めるための重要な仮定です。
ただし、現実にはさまざまな単位のデータが入力値となり得るため、必ずしもその分布に従うとは限りません。特定の特徴量によるバイアスを防ぐためにも、どの機械学習の手法を扱うかに応じて正規化・標準化などの前処理を行うことで対応します。
回帰分析とは、結果と要因の数値関係を調べ、それぞれの関係性を明らかにする統計的な分析手法のことで、要因の数値は「説明変数」、結果の数値は「被説明変数」と呼ばれます。説明変数が2つ以上あり、複数の変数の関係性を分析する「重回帰分析」は、機械学習では主に予測モデルとしての応用を目的として発展しました。
ニューラルネットワークにおけるニューロンの発火(活性化)は、この重回帰分析の概念に基づいています。ニューロンの発火とは、あるニューロンへの入力信号の総和がしきい値を超えたときに、そのニューロンが次の層のニューロンへ情報を伝達するプロセスのことで、脳神経細胞が電気信号を発火させる仕組みを模倣したものです。活性化によって非線形性が導入されることで、単なる線形モデルの組み合わせでは解決できない、より複雑なパターンや関係性を学習できるようになります。
ベイズ推定とは、「事前の知識(事前分布)」と「観測データ(尤度)」を組み合わせて、事象の確率を「より確からしい状態」へと更新していく統計学的手法です。経験を生かしつつ、新しい情報に基づいて柔軟に考えをアップデートするという、人間が行う推論に近い方法だといえます。ベイズ推定では、最初から十分なデータ量がそろっていなくても問題ありません。
データが増えるたびに確信度を高められるベイズ推定は、さまざまな分野で機械学習へ応用されています。例えば、迷惑メールのフィルタリングや自動運転、医療診断支援など、不確実な状況下での意思決定に有用です。ベイズ推定では、単なる予測値だけでなく、その不確実性の度合いも示されるため、特に信頼性が重視される場面で価値を発揮します。
統計データの分析は、医学の研究やビジネス、スポーツなど、さまざまな場面で不可欠です。その膨大なデータを分析するには専門的なスキルや多くの時間を必要としますが、AIの活用で自動化を図れば、より迅速に正確な洞察を得ることが可能となります。ここでは以下のステップに従って、その概要をご紹介します。
統計データ分析は、関連するデータの収集から始まります。ここで集めるデータの質と量がのちの分析精度に大きく影響する、重要なプロセスです。AIやAPI連携などの技術を取り入れることで、処理スピードの飛躍的な向上が見込めます。また、多様なデータセットやデータソースから関連性の高い情報を得やすくなり、データの正確性や完全性も担保しやすくなります。
収集したデータは分析に適したかたちで整理し、一元管理する必要があります。不正確なデータの除去など、データクレンジングには多大な手間がかかりますが、AIでデータのパターンを識別するなどすれば効率的に処理することが可能です。
その後、データウェアハウスなどのデータ管理システムを利用し、セキュリティとデータの整合性を確保した状態でデータ管理を行います。このとき、AIによる異常検知やリスク評価を自動的に行うようにしておけば、セキュリティインシデントの発生リスクを軽減することもできます。
データの整形は、収集したデータの品質を向上させ、分析結果の信頼性を高めるために不可欠です。欠損値の処理、異常値の検出と修正、データの変換や正規化などを行うことで、データセットの品質向上を図ります。ここでもAIによる自動化が役立ちます。
まず、欠損値の処理についてですが、適切な処理方法はデータの性質や分析の目的に応じて異なります。例えば、時系列データの欠損がランダムに発生している場合には、前後の値から線形補完を行いますが、欠損に一定のパターンがみられる場合には時系列予測モデルを使用して値を推定するのが適しています。異常値の修正には、予測モデルの使用で合理的な値を生成することが可能です。
また、深層学習を活用すれば、自律的にデータの特徴を学習し、適切なスケーリングを行えます。ほかにも計算コスト削減のための次元削減に用いられる主成分分析などの手法を自動化すれば、データセットの主要な特徴を抽出した効率的な処理が実現します。
続いて、データの視覚化や基本統計を用いて、データセットの特性を深く理解するための「探索的データ分析(EDA)」を行います。複雑なデータ間の関係性を把握するための高度な分析には、AIの活用が役立ちます。
データの視覚化には、ヒストグラムや散布図、箱ひげ図などを用います。AIによって瞬時にデータの分布や傾向を描画できるだけでなく、人間なら見逃してしまいかねない知見もパターン認識によって得られる可能性があります。中央値や標準偏差、分散といった基本統計量の計算を自動化すれば、回帰分析などの複雑な統計的手法も扱いやすくなり、より正確にデータセットの特性が把握できるようになります。
また、類似した特性を持つデータをグループ化するクラスタリングでも、AIによるk平均法などのアルゴリズムを利用することで、複雑なパターンや関係性を発見しやすくなります。膨大なデータを効率的に処理できるため、計算時間が大幅に短縮される点も強みです。
データの特性が理解できたら、予測モデルや分類モデルなどの統計的モデルを構築します。予測モデルは過去のデータに基づく将来の予測に、分類モデルはデータをカテゴリに割り当てるために使用されます。
このとき、機械学習のプロセスを自動化する「自動機械学習(AutoML)」という技術を活用すると、多様なアルゴリズムから最適なモデルを選択できるだけでなく、パラメータのチューニングも自動で行えます。パラメータの設定によってモデルのパフォーマンスは大きく向上する一方、最適な設定を見つけるには試行錯誤が必要なため、自動化による恩恵は大きいといえます。自動チューニングには、グリッドサーチや進化的アルゴリズムといった高度な探索アルゴリズムが用いられます。
その後、モデルの予測・分類の正確さを定量的に評価するためのメトリクスを計算して、モデルを評価します。評価の過程を通じて得られた知見を基に調整を繰り返し、モデルが十分な性能を示したと判断できれば、実際の意思決定に適用します。
データ分析を行う目的は、データから有益な知見を得て、研究やビジネスの現場での施策に落とし込み、実際に活用することです。
そのためには、まず、モデルから得られた結果を正確に解釈することが大切です。単純に統計的な有意性を確認するだけでなく、モデルを適用したい場面でどのような影響が生じるかを理解する必要があります。このとき、AIによって複雑なデータセットからパターンや関連性を素早く識別することが可能です。
そして、分析結果に基づいて施策を立てる際にもAIが役立ちます。データセットから有用な洞察を引き出せるほか、リスクの特定と評価を自動化すれば、潜在的な問題を事前に識別して対策を立てやすくなります。また、そうして得られた知見を組織内に共有する際にも、AIは迅速なデータ処理や視覚的な表現が得意なため、重宝します。
AIと統計学について、両者の違いやAIと関連性の強い統計学的手法、統計データ分析にAIを活用する方法などをご紹介しました。AIと統計学の間には多くの共通点があり、統計学に対する深い知見があってこそ、より高度で信頼性の高いAI開発が可能になるといえます。
統計データ分析にAIを活用するときは、各ステップでポイントを着実におさえることが大切です。AIの特徴を理解して使いこなせれば、データから有益な洞察を得て、研究やビジネスにおける具体的なアクションを導き出せるようになります。
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