未経験から​エンジニアに​なる​ことは​可能？

結論から述べると、未経験からでもエンジニアになることは可能です。IT業界では慢性的なエンジニア不足が指摘されており、未経験者の採用・育成を積極的に行う企業が増えています。

最近では、「自社でエンジニアを育てる」という考えを持つ企業が多く、働きながらスキルを身につけられる環境も整いつつあります。しかし、企業によっては募集要項に「未経験歓迎」と記載されていても最低限のITスキルを求められるケースや、就職後に希望する業務に携われないケースもあるため、注意が必要です。

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未経験から​エンジニアへの​転職は、​難しいと​いわれる​理由・デメリット

未経験からエンジニアに転職する際に否定的な意見を耳にし、不安を感じることもあるかもしれません。ここでは、未経験からエンジニアへの転職の際に「難しい」「やめたほうがいい」といわれる理由や、そのデメリットについてご紹介します。

知識や​スキルを​身に​つけるのが​大変だから

エンジニアは専門職であり、未経験者が知識やスキルを習得するには時間と努力が必要です。プログラミング学習サービスを運営する株式会社SAMURAIの調査によると、平均学習期間は「17か月」、1日あたりの平均学習時間は「4時間24分」とされており、エンジニアとして実務をこなせるレベルに達するまでには「1,000時間以上」の学習が必要だとされています。

未経験からエンジニアになるためには、まずプログラミングを学ぶ必要があります。しかし、初心者にとってプログラミングは決して簡単なものではなく、学習を始めても思うように理解が進まず、途中で挫折してしまう人も少なくありません。さらに、エンジニアとして働くためには、単にコードを書けるだけではなく、エラーを解決する力や他人が書いたコードを理解する力も求められます。

参考：株式会社SAMURAI「【調査レポート】現役エンジニアに聞いた。エンジニアになるまでの1日の平均学習時間と学習期間を発表」

常に​知識の​アップデートが​必要だから

エンジニアの世界は技術の進歩が非常に早く、新しいプログラミング言語やツールが次々に登場します。エンジニアはそのたびに知識を習得する必要があり、働きながらの勉強が必須となります。特にIT業界は、ほかの業界と比べても技術の変化が速いため、数年後には現在のスキルが通用しなくなる可能性が高く、常に最新のトレンドをキャッチアップし続ける姿勢が重要です。

もし新たな知識を学ぶことを怠れば、エンジニアとして競争力を維持できなくなります。そのため、学ぶことが苦手な人や、「一度学べば一生安泰」と考える人にとっては厳しい職業といえるでしょう。

企業に​よって​労働環境が​異なるから

エンジニアという職業は、勤務先によって労働環境に大きな差があるため、「やめたほうがいい」といった声が上がることもあります。

実際、エンジニアの仕事は多忙になりがちで、特に繁忙期やシステム障害の対応時には、深夜残業や週末出勤が求められることも少なくありません。中には慢性的な人手不足により、長時間労働が常態化している企業も存在します。ただし、忙しい時期とそうでない時期のバランスをうまく取っている会社も多く、働きやすさは企業によって異なります。

また、エンジニアと一口にいっても、その業務内容はさまざまです。早い段階から開発業務に携われる場合もあれば、主に事務的な作業を任されることもあります。このような自分が希望する仕事を担当できるとは限らないという不確実性も「エンジニアはやめたほうがいい」といわれる理由の一つです。

下請け企業では​給料が​低いことがあるから

IT業界は多重下請け構造が一般的で、発注元から元請け、下請け、孫請けへと業務が流れるたびに中間マージンが差し引かれます。その結果、下請け企業のエンジニアは低賃金で長時間労働を強いられることが多く、「やめたほうがいい」といわれる一因となっています。

過酷な労働環境は報酬が低いだけでなく、モチベーションやスキル向上を妨げ、キャリア形成にも悪影響を及ぼします。そのため、IT業界に入る際は、企業の構造や雇用環境を慎重に見極めることが重要です。

対策としては、独立系企業への転職が有効です。こうした企業は多重下請けの影響を受けにくく、給与も比較的高めです。さらに、クライアントと直接関わる機会が多いため、コミュニケーション能力や顧客満足度を高めるためのスキルも磨きやすく、キャリアアップにもつながります。

未経験から​エンジニアに​なる​ことの​メリット

先ほどご紹介した理由から、否定的に見られる場合もある未経験からのエンジニアへの転職ですが、「将来性がある」「手に職がつく」「幅広い業界の仕事ができる」などメリットもあります。

将来性が​ある

IT業界は今後も成長が続くと予測されており、エンジニアの需要は年々高まっています。経済産業省の試算によれば、2030年には最大で約80万人のIT人材が不足する可能性があるとされており、ITが社会インフラとして不可欠な存在であることがわかります。

このような人材不足の状況から、企業が優秀な人材を確保するために賃上げを行うケースも増えており、未経験からでも実務経験を積んでスキルを磨けば、年収アップを目指すことが可能です。

また、エンジニアの活躍の場は「システム開発」「データ解析」「AI」「クラウド技術」など多岐にわたり、他職種と比べてキャリアの選択肢が豊富であることも魅力です。将来性のある分野で専門性を高めていくことで、安定したキャリア形成が期待できます。

参考：経済産業省「参考資料（IT人材育成の状況等について）」

手に​職が​つく

エンジニアの仕事はスキルを身につけることで、専門性を高められる職種です。キャリアアップを目指して転職した場合、一般的に収入増加が見込まれますが、特にIT業界では、技術力がそのまま市場価値につながるため、努力次第で収入やキャリアを大きく伸ばすことが可能です。

幅広い​業界の​仕事が​できる

IT技術は、金融・医療・製造・物流・教育など、あらゆる業界で活用されており、業務の効率化や新たなサービスの創出に貢献しています。ITはもはや一部の業界に限られたものではなく、すべてのビジネスの発展に不可欠な存在です。

エンジニアとしてITに携わることで、さまざまな業界のプロジェクトに関わるチャンスが広がり、キャリアの選択肢も豊富になります。異なる業界での経験は、業務内容や専門知識、企業文化の違いを学ぶ機会となり、視野を広げるだけでなく、柔軟な思考力や課題解決力の向上にもつながります。

また、異業種との交流を通じて新たなアイデアや視点を得られることも多く、自己成長を促す大きな要素となります。多様な経験を積みながら自分の強みを見つけていけるのも、ITエンジニアならではの魅力です。

エンジニアに​向いている​人・​向いていない​人の​特徴

エンジニアは日々進化する技術に対応するため、継続的な学習が求められる職種です。ITやプログラミングが好きで、地道な作業にも根気強く取り組める人、効率化や課題解決にやりがいを感じる人には向いています。また、好奇心が強く、柔軟に対応できる人、自発的に動ける人も活躍しやすいと考えられます。

一方で、ITに興味がなく、プログラミングに苦手意識がある人や、調査や試行錯誤を面倒に感じる人には不向きです。大ざっぱでルーティンワークを好むタイプや独断で仕事を進めがちな人も、チームでの開発には向かない可能性があります。自分の性格や志向を見つめ直すことが、エンジニアを目指す第一歩です。

未経験から​エンジニアに​なる方​法とは？

未経験からエンジニアを目指すには、まず目指す職種を明確にし、必要なスキルを計画的に学ぶことが重要です。段階的に経験を積みながらキャリアアップを目指しましょう。

目指す職種を​決める

未経験からエンジニアを目指す際は、まず自分がどの分野で活躍したいかを明確にすることが大切です。職種によって必要なスキルや学習内容が異なるため、目標を定めることで効率的な学習が可能になります。

この表は、未経験でも比較的目指しやすい職種です。のちほど、「未経験から挑戦しやすいエンジニアの職種」において詳しくご紹介します。

	職種	業務内容
システム開発系	テスター	システムやアプリケーションが正常に動作するかテストを行う
	プログラマー	システムエンジニアが設計した設計書に基づき、プログラムを作成する
Web開発系	マークアップエンジニア	Webデザイナーが作成した設計書に基づき、Webサイトを実装する
インフラ系	サーバーエンジニア	サービスを提供するコンピューターである「サーバー」の構築・運用・保守を行う
	ネットワークエンジニア	コンピューターやサーバーをつなぐ「ネットワーク」の構築・運用・保守を行う

未経験からの​転職が​難しい​職種は？

エンジニア職の中には、未経験からの転職が難しいとされる職種もあります。例えば、システム開発系の「システムエンジニア」や「アプリケーションエンジニア」は、要件定義や設計といった上流工程を担当するため、実務経験や高度な知識が求められます。

これらの職種を目指す場合は、まずは関連する職種で経験を積み、段階的にステップアップしていくことが現実的で効果的な方法です。

	職種	業務内容
システム開発系	システムエンジニア	システム開発の上流工程（要件定義・設計など）
	アプリケーションエンジニア	Webアプリケーションやスマートフォンアプリなど、アプリケーション開発全般（設計・開発・テスト・運用・保守など）
Web開発系	フロントエンドエンジニア	Webサイト開発などでユーザーから見える部分（フロントエンド）の開発 Webサイトのデザインやレイアウト、動きなどを実現
	バックエンドエンジニア	Webサイト開発などでユーザーから見えない部分の設計・開発・運用 （サーバー構築、データベース設計、サーバーサイドプログラム開発など）
インフラ系	データベースエンジニア	データベースの設計・開発・運用・保守
	セキュリティエンジニア	システム・ネットワークのセキュリティシステムの設計・運用・保守
	クラウドエンジニア	クラウド環境におけるITインフラを構築・管理・運用

勉強と​転職活動を​並行して​進めていく

エンジニアを目指すには、知識の習得と転職活動を同時に進めるのが効果的です。学習と並行してポートフォリオを作成すれば、選考時に「本気でエンジニアを目指している」ことをアピールできます。

特に、エンジニアに必要な知識の習得には時間がかかるため、早めの行動が重要です。プログラミングスクールを活用すれば、学習と転職支援を同時に受けられ、転職エージェントを併用することで、よりスムーズに求人紹介や面接対策も進められます。

未経験から​挑戦しやすい​エンジニアの​職種

「IT業界に興味はあるけれど、専門知識や経験がない」という方でも挑戦しやすいエンジニア職種があります。ここでは、未経験からでもスタートしやすく、実務を通じてスキルアップやキャリア形成が可能な4つの職種をご紹介します。

テスター​（ソフトウェア評価）

テスターは、開発されたシステムやアプリケーションが正しく動作するかを確認する役割を担います。テストエンジニアが作成したテストケースに沿って操作を行い、不具合やバグを見つけて報告するのが主な仕事です。必要なスキルは、コンピューターの基本操作やWord・Excelの基礎知識程度で、プログラミングの知識は不要とされることが多いです。しかし、プログラミングのスキルがあれば、より効果的なテストケースを考案できるため、習得しておくことが望ましいです。

業務はシンプルで、同じ作業を繰り返すことも多いため、単調な作業を丁寧にこなせる人に向いています。未経験からIT業界に入る第一歩として選ばれることも多く、実務を通じて開発現場の流れを学べる点も魅力です。将来的にプログラマーやシステムエンジニアを目指す場合の足掛かりとしても有効な職種といえます。

プログラマー

プログラマーは、システムエンジニアが設計した仕様書に基づいて、実際にプログラムを作成する職種です。使用する言語は「Java」「Python」「PHP」「Ruby」など多岐にわたり、それぞれに対応したフレームワークの知識も求められます。

主な業務は、プログラミング、テスト、デバッグなど、開発の下流工程を担当します。未経験者でも基礎的なスキルを身につければ挑戦しやすく、実務を通じてスキルアップが可能です。論理的思考力や集中力が求められ、地道にコツコツと作業を進めるのが得意な人に向いています。将来的には、上流工程を担うシステムエンジニアやアーキテクトへのキャリアアップも目指せます。

マークアップエンジニア

マークアップエンジニアは、Webデザイナーが作成した設計書に基づいて、「HTML」や「CSS」「JavaScript」を使ってWebサイトをコーディングする職種です。SEOやUI / UXの知識も求められ、ユーザーにとって使いやすく、見やすいWebサイトを実現する役割を担います。

HTMLとCSSは比較的習得しやすく、未経験者でも独学やスクールで学びやすいのが特徴です。Web制作に興味があり、デザインやユーザー体験に関心がある人に向いています。また、レスポンシブデザインやアクセシビリティ対応など、実務を通じて幅広いスキルを身につけられ、将来的には、フロントエンドエンジニアへのステップアップも可能です。

ネットワークエンジニア

ネットワークエンジニアは、企業のITインフラを支える重要な職種で、サーバーやPCをつなぐネットワークの「設計」「構築」「運用・保守」を担当します。TCP / IPやOSI参照モデルといったネットワークの基礎知識、ルーターやスイッチなどの機器の操作、セキュリティの知識が求められます。

構築業務は専門性が高い一方で、監視や保守といった業務は未経験者でも始めやすく、育成前提で採用する企業も多く存在します。細かい設定作業やトラブル対応が多いため、注意力があり、冷静に対応できる人に向いています。実務経験を積むことで、クラウドやセキュリティ分野へのキャリア展開も可能です。

未経験から​エンジニアを​目指すために​おすすめの​勉強方​法

未経験からエンジニアを目指すには、基礎知識の習得と実践的なスキルの両方が重要です。資格取得や書籍学習、プログラミングスクールの活用など、自分に合った方法で学習を進めてみてください。

資格取得の​勉強に​取り組む

エンジニアを目指す第一歩として、IT系の基礎資格取得に向けた勉強は非常に有効です。特に「ITパスポート」や「基本情報技術者試験」は、未経験者でも比較的取り組みやすく、ITの基礎知識を体系的に学べます。

これらの資格は、転職活動において「基礎力があること」の証明にもなり、書類選考や面接で有利に働く可能性があります。資格取得を目指すことで、学習のモチベーション維持にもつながり、自己管理能力や論理的思考力の向上にも役立ちます。

テキストや​書籍から​学ぶ

資格取得や基礎知識の習得には、テキストや書籍を活用した学習が効果的です。特にIT分野では、「コンピューターの構成要素やハードウェアとソフトウェアの違い」「インターネットの仕組み」「IT業界の区分」など、基本的な知識を身につけておくことが重要です。

これらの内容は、書籍を通じて体系的に学べるほか、インターネットや動画サイトなどからも情報を得られます。最近では電子書籍も充実しており、スマートフォンやタブレット端末を使えば、通勤時間や休憩時間などのスキマ時間を活用して効率よく学習を進めることも可能です。

プログラミングスクールで​学ぶ

効率良くスキルを習得したい方には、プログラミングスクールの利用がおすすめです。現役エンジニアによる丁寧な指導が受けられるため、独学で挫折しがちな人でもモチベーションを維持しやすくなります。

自分の目標に合ったコースを選べば、必要なスキルを効率的に学べるだけでなく、転職保証つきのコースもあり、最短距離でのキャリアチェンジが可能です。受講費はかかりますが、返金保証や国の給付金制度を活用すれば経済的負担を抑えることもできます。転職サポートが充実しているスクールも多く、未経験者にとって心強い選択肢です。

未経験から​エンジニアに​転職する​際の​企業の​選び方

未経験からエンジニアを目指す際は、企業の事業内容や教育体制、労働環境をしっかり見極めることが重要です。自分に合った環境を選ぶことで、スムーズなキャリアスタートが可能になります。

1. SES企業・受託開発企業への​転職を​目指す

未経験からエンジニアを目指すなら、まずはSES企業や受託開発企業を検討するのがおすすめです。SES企業はクライアント先に常駐して開発業務を行い、受託開発企業は自社内で開発を請け負います。

どちらも実務経験を積みやすく、教育体制が整っている企業も多いため、スキルを身につけながら働ける環境です。自社開発企業は人気が高く競争率も高いため、まずは経験を積める企業を選ぶのが現実的です。

2.教育・研修制度に​着目する

未経験からエンジニアを目指す場合、教育・研修制度が整っている企業を選ぶことが成功のカギです。企業によっては数日で終わる簡易的な研修もあれば、数か月かけてじっくり育成するところもあります。

スキルがまったくない状態からのスタートであれば、長期的な研修制度がある企業の方が安心です。求人票だけでなく、企業の公式サイトや採用ページも確認し、研修内容やサポート体制を事前にチェックすることが大切です。

3.労働条件を​確認する

エンジニアの働き方は企業によって大きく異なります。柔軟な働き方に憧れて転職しても、実際には残業が多かったり、希望と異なる業務を任されたりする場合もあります。 Webエンジニアとして入社したのに、実際はサーバーサイドの開発が中心だったということもあります。こうしたミスマッチを防ぐためには、面接時に具体的な業務内容や残業の有無、休日出勤の頻度などをしっかり確認することが大切です。

4.残業時間や​社風の​実態を​調べる

求人票には書かれていない「社風」や「現場の雰囲気」も、働きやすさを左右する重要な要素です。こうした情報は、転職エージェントのアドバイザーを通じて得るのがおすすめです。

アドバイザーは企業を訪問して内部の雰囲気を把握していることが多く、実際の残業時間や人間関係など、リアルな情報を教えてくれることもあります。企業の口コミサイトなども併用し、働く環境を多角的に確認しましょう。

まとめ

未経験からエンジニアを目指すことは十分に可能ですが、簡単な道ではありません。「難しい」「やめたほうがいい」といわれる背景には、学習の難しさや労働環境の厳しさなど、現実的な課題があるのも事実です。しかし、慢性的なエンジニア不足により需要が高く将来性があり、スキルを身につければ安定したキャリアや高収入も目指せる魅力的な職業といえます。

自分に合った職種を見極め、計画的にスキルを習得し、企業選びを慎重に行うことがキャリア形成において非常に重要です。資格取得やスクールの活用、転職エージェントの支援などを上手に取り入れることで、より着実にステップアップを目指せます。

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