
企業が成長していくためには、自社で働く従業員を成長させていくことが不可欠です。従業員は日々の業務を通じて知識やスキルを身につけ、企業に欠かせない戦力として成長していくものですが、社員研修や配置転換などの機会を企業が適切に与えることができれば、成長をより加速させることができます。この記事では、従業員が成長できる機会や状況を表す「成長機会」と、それを与えるための企業の取り組みを解説します。
企業が成長していくためには、自社で働く従業員を成長させていくことが不可欠です。従業員は日々の業務を通じて知識やスキルを身につけ、企業に欠かせない戦力として成長していくものですが、社員研修や配置転換などの機会を企業が適切に与えることができれば、成長をより加速させることができます。この記事では、従業員が成長できる機会や状況を表す「成長機会」と、それを与えるための企業の取り組みを解説します。
仕事における成長機会とは、日々の業務のなかで社会人として成長できる機会や状況のことを指します。例えば、仕事に役立つ知識やスキルを習得できる社員研修やOJTだったり、新たな経験を積むためにワンランク上の業務を対応したりすることなどが挙げられます。成長機会を通じて従業員が成長することは、その人材が担う業務範囲の拡大やパフォーマンスの向上につながり、企業にとって業績向上などの効果をもたらします。企業が成長していくためには、従業員へ適切に成長機会を与えていくことが重要です。
成長機会と似た言葉に「成長実感」があります。成長実感とは、成長機会を通じて“成長した”と従業員本人が実感できることを指します。たとえ成長機会に恵まれたとしても、結果的に成長したと実感できなければ、従業員は働きがいやモチベーションなどを感じることができません。企業として従業員の持続的な成長を促すには、「成長機会」と「成長実感」の両方が求められます。
企業が従業員へ成長機会を与えることは、企業と従業員の双方にとってメリットがあります。主なメリットについてご紹介します。
成長機会を適切に与えていくことで、従業員のパフォーマンス向上や効果的な人材育成につながり、全体的な生産性アップに寄与します。結果として、企業の業績や競争力の向上が期待できます。
従業員側は、与えられた成長機会を通じて新たな知識やスキルを習得したり、自身が望むキャリアを実現したりすることができます。結果として、能力や地位、年収のアップなど自身の市場価値向上につなげられます。
仕事における成長機会とは、主に以下のような内容が挙げられます。いずれにおいても、従業員が公平に成長機会を得られる状態をつくることが、企業に対する従業員のエンゲージメントにつながり、離職率の低下といった効果をもたらします。
従業員にワンランク上の業務を対応してもらうことは、成長機会を与えることになります。それまでの経験を土台とし、より複雑で不確実性の高い業務を任せることで従業員の視野が広がり、新たな知識やスキルの獲得が期待できます。プロジェクトのリーダー役などを任せることで、リーダーとしての人材育成にもつながります。
従業員の仕事に対して上司や先輩社員がフィードバックを行うと、従業員自身が良かった点・悪かった点を客観的に認識できます。次の行動に向けて考える力が養われ、成長を促す効果が期待できます。また、直属の上司ではなく、気軽にアドバイスをもらえるような先輩社員(メンター)を設けるメンター制度の導入も一つの方法です。
業務に役立ったり生産性アップにつながったりする資格の取得を、企業が金銭的にサポートすることも成長機会を与えることになります。また、そのような資格を取得している従業員に対して資格手当などを与えることも同様です。これらの取り組みが、「成長を応援してくれる」「努力を認めてくれる」といった気持ちにつながり、従業員の成長促進につながります。ただし、すべての資格が業務に役立つわけではないため、企業として取得を推奨する資格を設定し、従業員側に伝える必要があります。
新しい知識・スキルの獲得が必要な職種・環境への異動も成長機会の1つです。日本企業では、新卒採用入社の従業員に対して、ジョブローテーションによってこのタイプの成長機会を提供しているところもあります。これまでのスキルやノウハウが転用できない環境への異動は、従業員の経験の幅と対応可能な業務範囲を拡大させます。また、従業員個人の適性を見極めるきっかけにもなります。
知識やスキルを習得するためには、インプットを行った後にアウトプットすることが大切です。社員研修などのインプットの場を設けても、業務のなかで活用できるシーンがなければインプットした内容はなかなか定着しません。従業員の社員研修などを検討する場合は、研修のなかでアウトプットにつながる実践的な内容を設けたり、実務のなかですぐに活用できるような内容を検討したりすることが大切です。
新しいITツールやシステムを導入するとき、従業員はツールの使い方やツールに関する知識・スキルの習得が必要になります。このようなケースも、成長機会を与えることの一つといえます。また、ツールで業務を効率化できれば、空いたリソースをコア業務に集中してもらえるほか、別の成長機会を与えることにもつながります。
従業員が成長するかどうかは、本人の意識による部分が大きいといえます。とはいえ、企業が従業員へ適切に成長機会を与えていない場合は、企業は従業員の成長を阻害しているともいえます。ここでは、従業員の成長機会を奪っている企業の特徴について解説します。
プレイングマネージャーが多い企業では、自分がやったほうが早いなどの理由で上司が部下の仕事を対応するケースがあります。企業全体で見れば効率的ですが、部下がレベルの高い業務に携わる機会が減るため、結果的に成長機会を奪うことになります。未経験の業務を最初からこなせる人材はいません。育成の一環として捉え、従業員の業務を忍耐強く見守る姿勢が求められます。
従業員が仕事の意義や目的が理解できていなければ、仕事を作業的にこなすようになります。このような状態では課題に対する認識が薄くなり、仕事の経験を成長につなげることが難しくなってしまいます。できる限り早い段階で、なぜその仕事が必要なのか、意義や目的を理解してもらうよう指導することが大切です。その上で、課題の明確化や解決策を考える方法をレクチャーすることが大切です。
適切なアドバイスを与えないことも、成長の阻害につながります。従業員の仕事に対して、上司や先輩が適切にアドバイスをすることにより、気づきを得ることができ、仕事に対し創意工夫をするようになります。こうした機会を適切に与えていない場合、新たな視点や気づきを得る機会は減り、成長機会が失われてしまいます。
せっかく成長機会を与えても、従業員自身に意欲がなければ成長につながりません。企業は成長機会を与えるだけでなく、従業員の成長意欲を高めるような工夫も求められます。その一部をご紹介します。
従来の日本企業では、スキルアップ目的のジョブローテーションや、ワンランク上の業務を任される立場となる昇進の対象者は、所属部署や性別、年齢層などによって偏りがありました。しかし、働き方の多様化が進む昨今では、特定の人にのみ成長機会を与えるだけでは不十分といえます。昇進者の偏りをなくしたり、ブランクのある人材への教育・研修を充実させたりするなど、従業員の多様性に合わせて幅広く公平に成長機会を与えることが大切です。
初めての業務やポジションで最初からうまくいく人は少なく、ミスをしてしまうことも往々にしてあります。しかし、そのようなミスを必要以上に責める組織では、せっかく成長機会を与えようとしても誰も挑戦してくれません。従業員の成長を促すなら、まずは挑戦したことを褒める風土をつくることが重要です。
従業員の目標を設定する際、難易度の高い目標を設定することも考えられます。しかし、目標の難易度が高すぎると従業員が挫折してしまう可能性も高まります。このようなことを踏まえ、最終目標までの過程を細分化して小さな目標を複数設定し、それらに対して評価できる体制をつくることが大切です。最終目標までのうまくいったアプローチや工夫への評価が成功体験となり、モチベーションを下げることなく持続的な成長を促すことができます。
どのようなキャリアパスを描いており、どの方向へスキルを伸ばしたいかは従業員によって異なります。成長機会を与える際は、企業側の意向を押しつけるのではなく、まずは従業員のキャリア志向を理解することが大切です。たとえ企業側が良かれと思って与えた成長機会であっても、従業員の目指したい方向と大きくずれていれば、モチベーションの低下や離職のきっかけになる恐れがあります。1on1ミーティングなど、個々の従業員が考えるキャリアについて、話し合う機会を設けることがお勧めです。
いかがだったでしょうか。成長機会について、言葉の意味や具体的な例、メリットなどについて解説しました。企業が成長するには従業員の成長が欠かせません。従業員の成長は、企業が戦略的に成長機会を与えていくことでより加速することが期待できます。この記事でご紹介した内容が、企業にとって少しでも参考となれば幸いです。