PMOとは? 役割や導入のメリット、向いている人の特徴を解説!

PMOとは? 役割や導入のメリット、向いている人の特徴を解説!

プロジェクトを期日までに完成させるには、総司令官であるPM(プロジェクトマネージャー)の迅速で的確な意思決定が不可欠です。しかし、体制の構築から進捗管理、トラブル対応を含めた運営まで、多岐にわたる業務と並行して重要局面での高度な意思決定に対応するのは容易ではありません。そこで、PMの活動を助けて本来の業務である意思決定に集中できる環境をつくり、プロジェクトの成功率を高める組織としてPMOを設置することがあります。本記事では、PMOの役割や導入することで得られるメリット、PMOに適性がある人の特徴などについて解説します。

PMOとは​プロジェクトマネジメントの​支援を​行う​部署や​組織の​こと

PMOはProject Management Office(プロジェクトマネジメントオフィス)の略で、プロジェクトマネジメントを支援するさまざまな職種が在籍する組織、または職種の集合体です。一般社団法人日本PMO協会は、PMOを「組織内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門や構造システム」と定義しています。PMOの設置の仕方は2通りあり、組織内に部署として設置される場合と外部の専門組織にPMO業務を委託する場合があります。

PMOの​役割

PMOには、PMの周辺業務を引き受けて業務の進行をスムーズにしたり、コストやリソースなどをコントロールしたりするなど、大きく分けて5つの役割があります。それぞれの役割について詳しくご紹介します。

PMの​周辺業務を​引き受け、​進行を​スムーズに​する

PMOの最も重要な役割は、スケジュール管理をはじめ煩雑な事務処理、トラブル対応といったPMの周辺業務を処理し、PMが意思決定に集中できるようサポートすることです。本来、PMはプロジェクトを期日どおりに完遂するための意思決定に注力しなくてはなりません。しかし、プロジェクトの規模が大きくなると、PMの業務に意思決定以外のタスクが増加する傾向があります。結果として指揮系統に乱れが生じてプロジェクトの質が低下したり、メンバーの判断ミスによってプロジェクトが停滞したりするリスクが高まります。

PMOがバックオフィス業務を引き受けることで、PMは意思決定のための情報収集に時間を使えるようになります。また、プロジェクトの進行スピードが速まるほか、PMの判断の精度とともに、プロジェクトそのものの質的向上が期待できます。

コストやリソースなどを​コントロールする

社内で進行する複数のプロジェクトを包括的に見て適材適所に人材を配置することや、プロジェクトにかかるコストを管理することもPMOの役割の一つです。特に、限られた人材でプロジェクトを遂行するためのリソース管理は、企業の利益の最大化にもつながる重要な任務です。また、リソース管理に伴って生じる関係部署とのすり合わせや利害調整などもPMOが行います。

PMを​任せられる​人材を​育成する

PMOの役割として、PMの育成を担うこともあります。PMには、豊富な業務経験とリーダーシップ、問題解決能力、分析力など多岐にわたる能力が必要です。そのため、「DX需要の高まりで開発の引き合いが増加しているにもかかわらず、旗振り役になる人材がいない」「PMを任せた人材が力不足で、思うようにプロジェクトが進行しない」といったPMのなり手不足に悩む組織は少なくありません。PMに必要なスキルを熟知しているPMOが教育制度や研修制度を整えることで、プロジェクトを任せられる優秀なPMの育成につながります。

PMの​苦手分野を​補完する

PMの業務を一部代替したり、客観的な立場からアドバイスしたりすることによって、PMの苦手分野をフォローするのもPMOの役割です。前項でも触れたとおり、PMには広く深い専門知識と大局的な視野、さらにはメンバーに信頼されるヒューマンスキルが求められます。しかし、それらのすべてを兼ね備えたパーフェクトな人材は少なく、優秀なPMであっても得意分野と苦手分野があるのが一般的です。そのため、PMOはPMの苦手分野がプロジェクトの進行に支障を来すことがないよう、多様なプロジェクトの支援で得た知識と経験を生かしてPMの業務を補完します。

プロジェクトの​環境を​整備し、​標準化する

プロジェクトごとに進め方やスケジュール管理の方法、使用している書類のフォーマットなどが違うと、抜け漏れが生じたり作業が属人化したりしがちです。PMOは組織内で動いている複数のプロジェクトを横断的に支援し、各プロジェクトを統率するPMの仕事を助けるとともに、すべてのプロジェクトのルールやツール、プロジェクトマネジメントの方法を標準化する役割を担います。組織として一貫性のあるルールを確立することで、プロジェクトに関わる全メンバーが一定以上のレベルで業務を遂行できるようになり、担当者1人に負担が集中して業務の質とスピードが落ちるのを防げます。

PMOと​PMの​違い

PMOとPMはどちらも組織のプロジェクトに関わる立場であり、密接に関係しています。しかし、それぞれのプロジェクトに対する立場と、求められるスキルには違いがあります。具体的な違いは下記のとおりです。

プロジェクトに​対する​立場

PMOとPMでは、プロジェクトに対する立場が違います。PMOは、PMが業務に専念できるようバックアップする仕事です。進行しているすべてのプロジェクトを横断的に見て進行状況を把握し、それぞれのPMに必要な支援を提供します。なお、前項で触れたPMの苦手分野を補完する役割などを担う場合、PMと同様のリーダーシップを発揮しなければならない場面もありますが、基本的には表に出るPMを陰で支えるのがPMOの役割だといえます。

一方、PMは個別のプロジェクトのリーダーであり、プロジェクト全体を進行・管理するのがメインの仕事です。担当するプロジェクトに対して責任を負い、納期までにプロジェクトを完結させるための意思決定をします。

求められる​スキル

求められるスキルが違うこともPMOとPMの違いです。PMOには、必要な情報を収集して分析する力や関係する部署・担当者との調整および交渉をスムーズに行うためのコミュニケーション能力、スケジュール管理能力、課題解決力など、プロジェクトの品質を維持するための監視役・調整役としてのスキルが求められます。そのため、PMOの中でも上位に当たる職種を目指す方は、複数のスキルを身につけておく必要があります。

一方、PMに求められるスキルは、プロジェクトメンバーのモチベーションを高めることです。全体を統率するマネジメント能力や開発に関する専門的な知識と技術力、メンバーの意見をくみ上げるヒアリング能力、納期に間に合わせるためのタイムマネジメント能力など、現場に寄り添った実行能力があると活躍の可能性が高まります。

PMOと​ITコンサルタントの​違い

プロジェクトを進行するにあたって、PMOを組織化するかITコンサルタントを利用するか悩むケースがありますが、PMOとITコンサルタントの違いは支援する対象です。IT領域のプロジェクトを支援するというと、PMではなくITコンサルタントをイメージする方もいるかもしれません。ITコンサルタントは、クライアントの課題を解決し、目標を達成するために個々のビジネスの状況に沿ったITソリューションを提案する仕事です。また、IT戦略そのものの立案から関わったりDXを推進したりもします。よって、ITコンサルタントが介入して支援する場合、その支援対象は社内のIT業務全般に及び、具体的な内容は企業によっても異なります。

一方、PMOの支援する対象は、プロジェクトマネジメントです。基本的には、組織のIT全般を支援してほしいならITコンサルタント、プロジェクトのみの支援を望むならPMOというように、支援の内容によってすみ分けがなされていると考えられます。ただし、場合によっては、ITコンサルタントがPMOの役割を兼任するケースもあります。

PMOを​導入する​メリット

PMOを導入することによって得られるメリットとして、客観的な視点で支援ができることや現場の負担軽減につながることなどが挙げられます。それぞれのメリットについて詳しく紹介します。

客観的な​視点で​支援できる

PMOを導入するメリットは、客観的な視点で支援できることです。PMOは、プロジェクトの中に入って推進を担うというより、各プロジェクトを包括的に見て進捗状況を可視化し、ボトルネックを取り除く役割です。良い意味で一歩引いた立場にいるため、自分が担当するプロジェクトの目標達成に向けて近視眼的になりがちなPMに代わって、冷静に状況を判断できます。

プロジェクトに関わるメンバー全員が内部にいると、メンバー間のわずかな認識の相違や方向性のずれに気づきにくいものです。また、漠然と感じている不安をうまく言語化できずに問題提起をあきらめてしまうメンバーもいるかもしれません。プロジェクトを客観視できるPMOがいると、プロジェクトのリスクを早期に察知して軌道修正でき、品質を落とさずに当初のスケジュールを維持することが可能になります。

現場の​負担軽減に​つながる

PMOを導入すると、プロジェクトを1人で率いるPMの負担を軽減できるのもメリットの一つです。大規模なプロジェクトや、会社の命運を分けるような重要なプロジェクトにおいて、PM1人にかかる精神的負荷の大きさは計りしれません。どんなに優れた能力を持つPMであっても、本来の業務に集中しながら事務処理や研修、トラブル処理などを完璧にこなすのは困難です。一つの判断に迷っている間に発生した小さなトラブルの芽やちょっとした作業の遅れを察知できず、プロジェクトのゴールが遠のくこともあるかもしれません。そこで、PMOが現場の付随業務を引き受けることで、PMはPMにしかできないプロジェクトのコントロールや統括、判断に集中できるようになり、精神的・肉体的にぐっと楽になります。

また、PMに業務が集中していると、仮にPMが休んだり退職したりしたときにプロジェクトが停滞するリスクが高くなります。しかし、PMOが導入されていると、PMが持っている情報は必ずPMOにも共有されるため、PMがいないときもプロジェクトを止める必要がありません。なお、PMOにたまったノウハウをPMの人材育成に生かす好循環にも期待できます。

コミュニケーション不全を​防げる

PMOの導入によって、PMの代わりに経営陣または現場とコミュニケーションを取り、両者の認識の相違や隔たりを防げるのもメリットとして挙げられます。プロジェクトを成功させるには、PMが日頃から経営陣や現場と密に情報を共有して信頼関係を構築することが必要です。しかし、多忙なPMは、目の前の業務に追われることが多く、周囲と頻繁にコミュニケーションを取るのが難しいことも少なくありません。なお、技術に明るいPMOがいれば、技術的な課題をわかりやすく言語化してPMの代わりに経営層に伝えたり、PMが拾いきれない現場の声をくみ上げてコミュニケーション不全を防いだりするなど、人間関係の側面からもプロジェクト運営の円滑化が図れます。

意思決定の​精度と​速度が​向上する

PMの意思決定の精度と速度が向上することも、PMO導入のメリットといえます。PMOを導入する最大の目的は、PMがプロジェクトにおける意思決定を迅速かつ正確に行える環境をつくることです。PMだけでは手が回らない情報の収集や整理、分析をPMOが担い、精査した情報をリアルタイムでPMに提供することで、結果としてプロジェクトの質が向上し、成功率も高くなると考えられます。

社内の​しがらみに​左右されにくくなる

外部のPMOに業務を委託した場合は、社内のしがらみに左右されにくくなることも、PMOを導入するメリットの一つです。外部のPMOは、社内の力関係や上下関係に左右されない公平・中立な存在として力を発揮します。一方、社内から選ばれたPMは、あくまでも担当するプロジェクトの管理者であり、役職や立場が足かせになって思うように活動できないこともあります。そのため、企業文化や社風によっては、経営陣に気軽に相談したり裁量権を持って自由に判断したりできず、力のある人の意見に合わせざるを得ないこともあるかもしれません。その点、外部のPMOにはそうしたしがらみがありません。プロジェクトを成功させること、ひいては事業計画を達成させることをミッションとして、必要以上に周囲に気を回すことなく活動し、プロジェクト完遂に向けたPMの意思決定を助けます。

PMOの​職種

PMOの中には主に3つの職種があり、それぞれが状況に応じて力を発揮します。ここでは、代表的な「PMOアドミニストレータ」「PMOエキスパート」「PMOマネージャー」の3職種を紹介します。

PMOアドミニストレータ

PMOアドミニストレータは、プロジェクトに関する事務的な作業を管理する職種です。プロジェクト開始のための事務的な準備をはじめ、プロジェクトに関するデータの収集やデータに基づいてPMに情報を共有するための各種設計書の作成、全体ミーティングの準備・進捗確認、経費処理など、PMの手が回りきらない事務作業全般を行います。

また、プロジェクトメンバーの勤怠管理をPMOアドミニストレータが担当することもあります。プロジェクトの規模が大きくなりプロジェクト内で複数のチームが編成された場合は、チームごとのミーティングの準備や進捗確認、必要なメンバーへの情報の展開、リマインドなども担当します。必要に応じてチーム同士のミーティングをコーディネートしたり、PMに状況を共有して早めの判断を仰いだりするのもPMOアドミニストレータの重要な役割です。

なお、PMOアドミニストレータになるには、PMOの基本であるプロジェクトマネジメントの知識や管理能力、コミュニケーション能力に加え、高い事務処理能力が必要になります。Microsoft Word、Excel、PowerPointなどを必要に応じて使い分けることはもちろん、プロジェクトメンバーの誰にとっても見やすくわかりやすい適切な資料を作成できる力が不可欠です。

PMOエキスパート

事務を管理するPMOアドミニストレータに対して、プロジェクトのクオリティーを管理するのがPMOエキスパートです。PMOアドミニストレータがまとめた各チームの進捗状況や収集したデータを分析し、ルールや環境を整備することでプロジェクトごとの成果のばらつきを抑えます。PMOエキスパートの業務は多岐にわたりますが、どの業務もプロジェクトの進捗と品質を安定させることを目的としています。PMOエキスパートの主な業務は下記のとおりです。

PMOエキスパートの主な業務
  • プロジェクトのプロセス策定
  • プロジェクトのプロセスの標準化
  • 情報収集方法、情報収集ツールの開発および標準化
  • プロジェクト管理ツールの開発および標準化
  • プロジェクトに関する資料の標準化

PMOがプロジェクトの細部および進行を標準化することで、属人性が解消されて業務効率が上がり、人的リソースやコストを削減する効果が期待できます。なお、PMOエキスパートはツールの開発などにも携わるため、管理能力やコミュニケーション能力に加えてエンジニアとしての豊富な業務経験が必要です。

PMOマネージャー

PMOマネージャーは、PMに最も近いPMOの責任者であり、PMOアドミニストレータとPMOエキスパートを含めたPMOチーム全体を管理するポジションです。PMOチーム全体の戦略策定や予算管理、PMOチームを形成するメンバーのマネジメント・教育などを通じて、PMOとPMOチームのメンバーが役割を果たせるよう導きます。同時に、経営層やPMとコミュニケーションを取り、目指す方向性に食い違いが出ないようにすることもPMOマネージャーに課せられた任務の一つです。

プロジェクトの進行を担うPMをサポートしつつ、PMOの活動とPMOチームを管理するPMOマネージャーには、PMOチームの中でもひときわ優れたマネジメント能力が求められます。そのため、PMまたはPMOとしての豊富な活動経験があると業務に役立てられます。また、「PMOスペシャリスト認定資格(一般社団法人日本PMO協会)」、国家資格の「プロジェクトマネージャ試験(独立行政法人情報処理推進機構)」などの資格を取得することもお勧めです。

PMOに​向いている​人は?

PMOは、PMの活動を助けて本来の業務である意思決定に集中できる環境をつくり、プロジェクトの成功率を高めることが求められます。PMOには、こうしたプロジェクトの品質を維持するための監視役、調整役としての高いスキルに加えて、コミュニケーション能力や忍耐力がある人が向いています。

コミュニケーション能力が​ある​人

PMOは、PMOチーム内はもちろん、経営層やPM、場合によってはクライアント企業とも接点を持って仕事をします。そのため、関わる人の意見に耳を傾けつつ、自分の意見も適切に伝えられるコミュニケーション能力が欠かせません。一人で黙々と仕事を完結させるのが得意で、ほかの人と連携しながら仕事をするのが苦手という人がPMOとしての活躍を目指すには、コミュニケーション能力を高める努力が必要になります。

忍耐力が​ある​人

PMOは、トラブルが起きても我慢強くPMを支えてプロジェクトを完遂させなくてはなりません。そのため、PMOには忍耐力がある人が向いています。どんなに綿密な計画を立ててスタートしても、プロジェクトには問題がつきものです。ミスやトラブルだけでなく、体調不良によるメンバーの離脱、顧客からの急な要望など、予期せぬ出来事で進行が妨げられることもあります。そのため、予定どおりの進行が難しくなったときも、決してあきらめず問題と向き合える人は、PMOに欠かせない人材だといえます。

技術者目線を​生かして、​PMOと​して​キャリアアップしよう

PMOは、PMのプロジェクトマネジメントをサポートし、プロジェクト成功の鍵を握る職種です。PMOがプログラミングなどのシステム開発作業を行うことはありませんが、システムエンジニアとしてソフトウェアの開発業務や運用に携わった経験があると、技術者への深い理解があるPMOとしての活躍が期待できます。

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