データサイエンティストとは? 仕事内容や必要なスキルを解説

データサイエンティストとは? 仕事内容や必要なスキルを解説

ビジネスのIT化が進み、得られたビッグデータをいかに活用するかが企業の競争力を左右する時代になりました。データに裏付けられた正しい意思決定は、顧客にフィットする商品やサービスの開発を可能にします。そこで、新たなビジネスチャンスの創出を助ける職種として注目されているのが、データを活用・分析して戦略を立案するデータサイエンティストです。本記事では、AIや機械学習の領域でも活躍が期待されるデータサイエンティストについて、仕事内容や求められるスキルなどを詳しく解説します。

データサイエンティストは、​データを​分析して​価値を​生み出す専門家

データサイエンティストは、企業活動に必要なデータを収集し、蓄積されたデータから必要な情報を抽出・分析して、ビジネスの課題解決に役立つ提案をする職種です。PCやスマートフォンの普及によって、顧客の行動履歴や購買履歴、SNSのコメント内容、位置データ、アクセスログなど、従来は把握できなかった多様なデジタルデータを大量に収集できるようになりました。しかし、得られたデータのすべてをそのまま活用できるわけではありません。なぜなら、音声や画像、テキストのようにフォーマットが統一されていなかったり、データの欠損やノイズによりデータの質や精度が低かったりするからです。

ビッグデータが宝の山になるかどうかは、そこから経営のヒントや役立つ知見を見つけ出せるかどうかにかかっているといえます。そのため、膨大なデータを価値あるものに変えるデータサイエンティストは、ビッグデータを宝の山に変えるためのカギを握る存在です。データサイエンティストによって意味のある情報へと加工されたデータは、経営方針や事業戦略の根拠として重要な意思決定をサポートするほか、新商品や新サービスのヒントとしても使われます。

データサイエンティストの​仕事内容

データサイエンティストには、自社ビジネスに貢献する働き方と、クライアントのニーズに合わせたデータ分析・加工をサービスとして提供する働き方がありますが、いずれの場合も業務の流れは同様です。ここでは、データサイエンティストのプロセスごとの仕事内容について詳しくご紹介します。

1. 仮説立案~データ収集

データサイエンティストの仕事は、仮説の立案から始まります。仮説が求められるきっかけは大きく2つあります。一つは、自社の業務システムや顧客管理システム、提供しているサービスなどから収集できるビッグデータがすでにあり、活用方法を探している場合です。企業には日々多くのデータが蓄積されていますが、「データが膨大過ぎて有用な情報を選び出せない」「データをどう分析していいかわからない」といった理由で、データを使った取り組みが後回しになっているケースが少なくありません。そのため、データサイエンティストは、手元にあるビッグデータを検証し、経営判断や事業運営に関する意思決定や、事業戦略の策定、売上・利益の向上、コストダウンといったビジネス目標への活用の可能性について仮説を立てます。

もう一つは、解決すべき経営課題や達成したいビジネス目標に対して、ビッグデータを使って提供できるソリューションを考える場合です。データサイエンティストは、課題解決などに必要となるデータの在りかを調べたり、そのデータが利用可能かどうかを見極めたりするほか、データの入手方法なども確認した上で、収集・分析するデータを決定します。そして、データの収集方法や分析方法を検討し、データを使って提供できるソリューションについて仮説を立て、その立証に向けて必要なデータの収集に移ります。

2. データ前処理

収集したままのデータは、フォーマットや情報の精度がばらばらで、無関係なデータも多く含まれています。そのため、データを正しく利活用するために「データ前処理」と呼ばれる工程が必要です。データ前処理とは、データに何らかの処理を施して、使えるデータに整える作業です。具体的な作業は多岐にわたるため、ここでは主な作業例を2つご紹介します。

データクレンジング

データクレンジングとは、不正確なデータや関係のないデータなどを特定し、修正したり削除したりしてデータの正確性を高めることです。データクレンジングが行われていないと、分析をしても正確な結果を得ることができません。そのため、データクレンジングは、データサイエンティストが関わる業務の中でも特に重要度が高い作業であるといえます。

データ統合

データ統合とは、複数のデータソースから収集されたデータを集め、必要に応じて統合(マージ)や集計をしてさらに精度を高めることです。さまざまなデータをできるだけ多く収集するための環境づくりもデータサイエンティストの仕事です。近年では、最新のIT技術を使うことによって、SNSのコメントや業務システムのログ、Webサイトに蓄積されたデータなど、さまざまなところから分析に使えるデータを収集できるようになりました。データを収集できていないソースがあれば、データベースの構築や収集プログラムの作成などを行い、環境を整えます。

3. データの​分析~レポーティング

データが整い、分析に必要な手法を選定した後、実際に分析・解析を行います。この際、データ分析の手法の選定も重要です。データ分析の手法は、属性別に情報を収集・分析する「クロス集計」、類似した集団をグループ化して特徴を分析する「クラスター分析」、時系列にデータを並べて期間ごとの変動要因などを分析する「時系列分析」などさまざまな手法があります。場面に応じて適切な手法を選ぶことで、分析の精度が上がります。なお、データ分析にあたっては、高速かつ大量に、主観を排した分析が行えるAIを活用するケースも増えているようです。また、企業によっては分析に必要な変数の作成や加工から、分析に必要なプログラムやアルゴリズムの作成までをデータサイエンティストが担うこともあります。

実際のデータ分析・解析では、データを組み合わせて検証し、偶然によって生じる可能性が極めて低い、確かな意味を持ったデータを見つけ出します。得られた結果を基に仮説を検証し、立証できた後は、レポートとして提言にふさわしいかたちにまとめることが大切です。なお、レポーティングにおいては、分析結果を見る側の視点に立って情報を整理することが重要になります。そのため、分析対象となるデータをKPI(重要指標)に設定し、変化をわかりやすく可視化した上で提言を行います。

データサイエンティストと​ほかの​職種との​違い

データサイエンティストは、データやAIを業務で取り扱うことから、AIエンジニアやデータアナリスト、データエンジニアと混同されることがよくあります。ここでは、データサイエンティストとそのほかの職種の違いについて解説します。

AIエンジニアとの​違い

データサイエンティストとAIエンジニアの最大の違いは、AIとの関わり方です。データサイエンティストは、データを活用するための分析や解釈にAIを活用します。対してAIエンジニアは、データサイエンティストなどがAIを活用するために、必要なタスクを実行できるAIモデルを考え、実際に構築します。つまり、AIエンジニアはAIを作り、データサイエンティストはAIを使っている点が両者の違いです。

データアナリストとの​違い

データサイエンティストとデータアナリストは、どちらもデータを扱う職種です。企業によっては、ほぼ同義で使用していることもありますが、厳密には職務領域が異なります。データサイエンティストは、データの集計や可視化、分析に加えて、分析結果に基づいた予測モデルの構築やビジネスの課題解決、新規事業戦略の立案などを担います。一方、データアナリストの場合は、データサイエンティストがデータを活用する前段階で、統計学などを駆使して収集・整理したデータを提示するまでの業務を担当することが一般的です。

データエンジニアとの​違い

データエンジニアは、データを活用するためのベース部分を担う職種です。具体的には、データを収集するためのシステムやインフラを構築し、構築した基盤を使ってデータを収集・保存する一連の流れを担当します。「データサイエンティストの仕事内容」でも触れた、データ前処理のプロセスは、最終的にアウトプットする施策の正確性を左右する重要な作業であるため、切り出してデータエンジニアに任せることも少なくありません。一方でデータサイエンティストは、データエンジニアが整理したデータを使ってビジネスをより良くするための提言を行います。データサイエンティストが本来の業務であるビジネスの意思決定や課題解決に注力できるように、前段階で必要な作業を担当するのがデータエンジニアであるといえます。

データサイエンティストに​必要な​スキル

データサイエンティストは将来性があり、ニーズも高い職種です。しかし、その性質上、一定のスキルがないと即戦力として活躍するのが難しいことも確かです。ここでは、データサイエンティストに必要とされる具体的なスキルについて詳しく解説します。

ビジネススキル

データサイエンティストに必要なスキルの一つは「ビジネススキル」です。ここでいうビジネススキルには、社会人として仕事をする上で基本となるコミュニケーションスキルやマネジメントスキルが含まれます。データサイエンティストは、社内外からのさまざまな依頼に合わせてデータを活用する職種であるため、それぞれの依頼者・クライアントのニーズをくみ取って適切な返答をしたり、自分の考えや思いを的確に伝えられたりするコミュニケーション能力が欠かせません。また、AIエンジニアやデータエンジニア、営業担当者などと組織したプロジェクトを率いることも多く、マネジメント能力も問われます。

データサイエンスに​関連する​スキル

データサイエンスとは、膨大なデータを分析し、ビジネスに有益な知見を見いだしたり、課題解決に役立てたりすることです。データサイエンスに関連するスキルは多岐にわたりますが、中でも必要性の高いスキルは下記の3つです。

統計や​分析に​関する​スキル

データから価値あるヒントを得るには、母集団から必要なデータを収集し、集計・加工する統計学のスキルが欠かせません。また、集計したデータを分析する目的を決め、その目的に沿った分析方法を選んでアプローチする分析設計のスキルも併せて必要です。

データを​可視化する​スキル

データの価値や有用性が誰にでもわかるように、データをグラフや画像、図などに起こし、視覚的に整理するスキルも重要です。データからどれだけ有用な情報が得られても、第三者に説明するときにわかりやすく伝えられなければ意味がありません。数字のデータを基にスピーディーに施策や戦略を策定するためにも、データの規則性や傾向をわかりやすくビジュアル化する必要があります。

機械​学習や​統計モデリングの​スキル

データサイエンスでは、データが示す事実を基に、現状を理解したり未来を予測したりします。しかし、膨大なデータから人間の力だけで規則性や傾向を見つけ出すのは限界があります。そこで、ビッグデータを効率的に分析するための機械学習や統計モデリングのスキルが役立ちます。

ITスキル

できるだけ時間をかけずにビッグデータ分析をするには、処理を効率化できるITスキルが必要です。ここでは、代表的な2つのITスキルをご紹介します。

プログラミングスキル

ビッグデータ分析に必要なITスキルの一つは、プログラミングスキルです。プログラミングスキルがあれば、データ分析をするためのツールを作成することが可能です。なお、データサイエンティストに必要なプログラミングスキルには、データを抽出するためのSQLや、データを加工・共有するためのXML、人工知能と統計処理に強いPython、統計解析向けのR言語などがあります。また、日々の業務で活用できる便利なツールやシステムを考案し、自ら設計・開発できるプログラミングスキルもあれば、業務の効率化が飛躍的に進むでしょう。

機械学習、​深層学習などの​アルゴリズムの​開発

実装スキル

機械学習や深層学習などのアルゴリズムを開発・実装するスキルも、ビッグデータ分析には必要です。最近では、大量のデータを高速で処理するためのアルゴリズムを開発し実装する上で、機械学習や深層学習のスキルを求められるケースが増えています。これらを使いこなせれば、効率的に情報を処理したり、識別したりすることが可能です。

データサイエンティストに​向いている​人

データサイエンティストは、多様な知識とスキルが求められる職種です。日進月歩で新しい技術が登場する分野なので、常に学ぶモチベーションを維持するためにも、職種に対する適性が重要になってきます。ここでは、どのような人がデータサイエンティストに向いているのかを、詳しくご紹介します。

論理的​思考が​得意な​人

データサイエンティストは、物事を構造的に捉えて問題点を整理し、因果関係を明らかにした上で結論を導き出します。何らかの問題に直面した際、論点を明確にし、客観的なエビデンスを基に推測を重ねていく思考ができることは、データサイエンティストとして重要な要素です。

地道な​作業が​苦に​ならない​人

データサイエンティストは最先端の職種ですが、仕事内容は決して派手ではありません。大量のデータに向き合い、細かな分析作業を黙々と行うことが苦にならない人でなければ、対応は難しいといえます。

攻めの​コミュニケーションが​できる​人

データサイエンティストの役割は、分析したデータを使ってビジネスの課題を解決することです。そのため、データを分析して終わりではなく、分析したデータを生かせそうな部署や関係者に対してデータ活用を勧める、攻めのコミュニケーション能力も求められます。

データサイエンティストに​役立つ資格

データサイエンティストとして活躍する上で、資格は必須ではありません。しかし、社内でのステップアップや転職によるキャリアアップを目指す場合、資格があると保有するスキルレベルを客観的に示すのに役立ちます。また、資格取得を目指して学ぶことで、新しい視点を得たり、あらためて基礎を見直したりすることも可能です。データサイエンティストにお勧めしたい、代表的な資格は下記のとおりです。

データサイエンティスト検定 リテラシーレベル

「データサイエンティスト検定 リテラシーレベル」は、データサイエンティストについて初めて学ぶ方やこれからデータサイエンティストを目指すビジネスパーソン、大学生、専門学校生などを対象とした資格です。試験では、一般社団法人データサイエンティスト協会が規定する「アシスタント・データサイエンティスト(見習いレベル)」と、数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムによる「数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)のモデルカリキュラム」に基づき、実務能力と知識を有することが問われます。また、データサイエンティストとして働く上で必須とされるデータサイエンス能力やデータエンジニアリング力、ビジネス力の3つのスキル領域も評価されます。

統計検定

「統計検定」は、統計学に関する知識やその活用スキルを評価する資格です。データに基づいて客観的に判断する力が問われるため、文系出身でデータサイエンティストを目指す方の基礎固めにお勧めです。受験種別には4級、3級、2級、準1級、1級、統計調査士、専門統計調査士、データサイエンス基礎、データサイエンス発展、データサイエンスエキスパートがあります。中でも、データサイエンスに関する3種は2021年に新たに開始された種別です。データ分析を初めて学ぶ方や、異なる分野からデータサイエンティストを目指す方は、データサイエンス基礎から始めることをお勧めします。なお、データサイエンス基礎では、ExcelやPythonを適切に扱える能力や分析モデルを選択する力などが問われ、試験でも実際にExcelを操作して、目的に応じたハンドリングをすることが求められるのが特徴です。

  • 参考:参考:一般財団法人 統計質保証推進協会「統計検定

G検定、​E資格

「G検定」と「E資格」は、どちらも一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する資格です。JDLAは、日本におけるディープラーニングの有効的な活用を推進し、産業競争力を高めることを目指しています。G検定もE資格も、ディープラーニングのリテラシーの有無を評価する資格ですが、対象と目的が異なります。

G検定

G検定は、あらゆるビジネスパーソンを対象とした、ジェネラリスト向けの資格です。AIにおける機械学習の手法の一つである、ディープラーニングの基礎知識を網羅的に学び、あらゆる分野で利用されているAIを事業活用できるAI人材へのキャリアアップを可能にします。

  • 参考:一般社団法人日本ディープラーニング協会「G検定

E資格

E資格は、ディープラーニングを実装できるエンジニアの育成を目的とした資格です。試験では、AI分野におけるディープラーニングをエンジニアとして活用するスキルを評価します。そのため、ディープラーニングの理論の理解を前提として、適切な手法で実装できる能力が問われ、G検定より難易度は高めです。また、受験にあたっては、ディープラーニングの理論を理解し、実装する能力を持つ人材を育成する「JDLA認定プログラム」を2年以内に修了していなくてはなりません。

  • 参考:一般社団法人日本ディープラーニング協会「E資格

データサイエンティストと​しての​キャリアアップを​目指そう

ビジネスにおけるデジタル化が飛躍的に進展するなかで、データサイエンティストは今後広く活躍できる可能性が高い、将来性のある職種だといえます。Sky株式会社では、データサイエンティストとして活躍できるさまざまな環境をご用意しているほか、今必要とされるスキルや技術が身につく社内外の各種研修を実施しています。データサイエンティストとしての第一歩を踏み出し、キャリアアップしたいという方は、ぜひ弊社の採用募集へのご応募をご検討ください。

応募資格やそのほかの条件、応募方法などは、こちらのWebサイトでご紹介していますので、転職をお考えの方はぜひご覧ください。

【募集職種】データ分析・生成AI基盤構築エンジニア
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